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毎日新聞2026/3/10 東京朝刊608文字
イスラム教シーア派の最高指導者としてアヤトラ・ホメイニ師の肖像画を掲げ、王制打倒を叫ぶデモ=1978年12月10日、UPI
イスラム教シーア派の聖地、イマーム・レザー廟がある広場を訪れる人々=イラン北東部マシャドで2022年2月7日、真野森作撮影
「大食」といっても胃袋とは関係ない。アラビアを指す中国・唐時代の漢字表記である。日本の遣唐使たちも唐の都、長安で大食からの使節に接触していたらしい▲イスラム教の預言者、ムハンマドは後継者を決めなかった。その代理とされた4代のカリフが信者の互選で決められた後、その地位を世襲したのがウマイヤ朝。白がシンボルで唐では「白衣大食」と呼ばれた▲それに従った多数派のスンニ派に対し、ウマイヤ朝を認めない少数派もいた。預言者のいとこだった第4代カリフと子孫を正統と考えるシーア派。その不満を利用し、ウマイヤ朝を倒したアッバース朝は黒を重んじた「黒衣大食」である▲君主のスルタンがカリフを兼ねたオスマン帝国の滅亡でカリフの称号はなくなった。政教一致のイスラム国家を再興させたのが、国民の大半がシーア派というイランで親米の王制を倒した1979年のイスラム革命だ。もっとも選挙を実施し、共和国を自称する▲革命を成功に導いたホメイニ師から最高指導者の地位を継いだハメネイ師は米国とイスラエルの攻撃で殺害された。その後継者は次男のモジタバ師という。革命防衛隊とのつながりが深い保守強硬派らしい。国民は王制同様の「世襲」を受け入れるのだろうか▲「石油の大食漢」といえばまず米国や中国が挙がるが、日本も中東の原油に頼る有数の消費国。原油価格が高騰し、株価も急落するのでは、複雑な歴史や宗教的背景を持つ遠い国の行方にも関心を持たざるを得ない。