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毎日新聞2026/3/26 東京朝刊654文字
新潟県糸魚川市で発見されたラピスラズリを手にする国立科学博物館の門馬綱一研究主幹=茨城県つくば市で2026年3月3日、酒造唯撮影
大阪・関西万博の迎賓館に展示されたヒスイの原石。産地、糸魚川市の業者が搬出直前に最後の磨き作業をしていた=糸魚川市小滝で2025年2月25日午前10時16分、中津川甫撮影
「沼名川(ぬなかわ)の底なる玉求めて得し玉かも……」。万葉集の歌に登場する沼名川は高天原にある神話上の川と解釈されてきた。それが実在の川に比定されたのは1930年代のヒスイの再発見が契機という▲列島を東西に分けるフォッサマグナに沿って流れる姫川。現在の新潟県糸魚川市にある支流の小滝川の川底からヒスイの原石が見つかった。古事記で大国主命(おおくにぬしのみこと)が求婚した越の国の沼河姫(ぬなかわひめ)と結びついた▲縄文遺跡から見つかり、古墳時代にはまが玉に使われた緑色のヒスイは奈良時代以降、姿を消す。一時は原産地を海外に求める説も有力だった。その謎が解け、全国で見つかったヒスイの大半が糸魚川産とわかった▲太古の地殻変動が貴重な玉石をもたらしたらしい。今度は古代エジプトから珍重されてきた「聖なる石」の発見というから驚く。ヒスイとして収集された「青い石」がラピスラズリとわかり、糸魚川市のフォッサマグナミュージアムで展示されている▲「世界無比を誇る群青の原石を出す山がある」。マルコ・ポーロが「東方見聞録」に記した今のアフガニスタンが最大の産地。ツタンカーメンの仮面に使われ、仏教の七宝の一つ、瑠璃ともされる。正倉院では革製ベルト「紺(こん)玉(ぎょく)帯(おびの)残欠(ざんけつ)」を飾る▲高価な顔料としても使われ、オランダの画家、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のターバンもラピスラズリの青とか。新発見がヒスイのように隠された歴史の謎を解くカギにならないか。「にわか歴史探偵」的興味もわいてくる。