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毎日新聞2026/4/8 東京朝刊863文字
地球から過去最も遠い地点への有人飛行に成功した米航空宇宙局(NASA)の宇宙船「オリオン」から見た月と地球=NASA提供・AP
人類の活動領域を月周辺へ拡大させる一歩だ。宇宙開発の転換期である。
4人の宇宙飛行士が乗る米航空宇宙局(NASA)の宇宙船が、月の裏側へ達した。地球から40万7000キロ離れており、人類として最も遠い地点を飛行した1970年のアポロ13号の記録を塗り替えた。
地球から最も遠い月の裏側の地点の飛行を終え、トランプ米大統領と交信する米航空宇宙局(NASA)の宇宙船に搭乗する4人の宇宙飛行士=NASATVより
米国が主導する国際探査「アルテミス計画」の一環である。トランプ米大統領任期中の2028年に、半世紀ぶりとなる人の月着陸を目指す。今回は、宇宙船の性能を確認するための月周回飛行だ。
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冷戦時代、米国はアポロ計画を打ち出し、69年に人類初の月着陸を成功させた。計12人を月面へ送ったが、巨額予算への批判が高まり、72年に計画は終了した。その後の有人宇宙活動の舞台は、地球の上空を周回する国際宇宙ステーション(ISS)に移った。
再び月が注目されているのは、水などの資源の存在が明らかになり、火星探査の拠点として期待されるからだ。米中対立が激化する中、国威発揚の側面もある。
地球から最も遠い地点への有人飛行に成功した米航空宇宙局(NASA)の宇宙船「オリオン」=NASA提供・AP
アルテミス計画は、月面に基地を建設し、人が恒久的に滞在する構想だ。日本や欧州、カナダなどとの国際協力で進める点が、アポロ計画とは異なる。日本は有人月面探査車や生命維持装置の開発を担い、日本人宇宙飛行士2人が月に立つ予定となっている。
一方、中国は30年までに宇宙飛行士を月面着陸させる目標を掲げる。19年には、世界で初めて月の裏側への無人探査機着陸を成功させた。ロシアと連携して国際月面研究基地の建設も計画し、南アフリカ、エジプト、タイなどが参加を表明する。
懸念されるのが、月面開発を巡る国際ルールがないことだ。
宇宙条約は国による月の領有を認めていないが、月の資源の扱いや企業活動に関する規定はない。大国同士の紛争を招きかねないだけでなく、開発から取り残された国の利益を損なう恐れがある。国連で議論されているものの、意見集約の見通しは立っていない。
探査を進めるうえで欠かせないのは、ルール形成などでの幅広い国際協力だ。大国間の覇権争いが、月面や宇宙空間に持ち込まれることは避けるべきである。