|
|
毎日新聞2026/5/14 東京朝刊有料記事988文字
損害保険ジャパンが実施した「AIとの付き合い方」に関する新入社員研修の様子。AIの業務への活用にあたっては、新人や若手だけではなく、管理職の力も試される=東京都新宿区で2026年4月24日、町野幸撮影
<moku-go>
生成人工知能(AI)が業務で広く使われる時代。いつの間にか、管理職には新たなミッションが生まれた。その一つが、部下の「AI任せ」を見破ることだ。
生成AIが出してきた答えには「一見してそれっぽいが、間違っているもの」が混ざる。気付けなければ、会社や顧客などへの実害が生じかねない。このため今年の新入社員研修では「AIの出力をうのみにしないよう」教える企業が増えてきた。
Advertisement
とはいえ、若手への研修や意識啓発だけでは防ぎきれないのが現実だ。実際に部下がAIに判断を委ねた提案や報告書を出してきたとき、今度は管理職側にも「うのみにしない」力が試されることになる。
「これ、AIだよね?」。AIを業務で積極活用する損害保険ジャパンの川真田一徳DX推進担当部長は、しばしば部下に率直にこう切り込む。それができるようになるためには「日ごろから部下の考え方や物事の理解レベルを把握することが重要」と語る。
管理職に新たに求められる力は、まだある。部下がAI使用を事前に明らかにした提案内容についても「部下はどこまで自分で考えたのか」を読み取り、レビュー(評価・点検)する力が必須という。
人材育成支援コンサル「ALL DIFFERENT」の根本博之シニアマネジャーは「今まさに複数の企業から、部下がAIを使って作成した成果物に対するレビューができるように『管理職を鍛え直す研修』をやってほしいという要望をいただいている」と明かす。企業から聞こえてくるのは「若手のAI利用についていけず、適切にレビューをできない管理職が多い」という嘆きの声だ。
「管理職を鍛え直す研修」とは何か。それは、部下に対し判断の根拠を丁寧に確認する▽自分自身の仮説も示してもらう▽AIの案にどこまで賛成で、どこに違和感があるかを聞き出す――などの方法論を教え、指導の場で実践可能にすることだという。
特に管理職世代にはAIそのものに抵抗感があり「自分は使わない」という人は少なくないように見える。その考え方自体は、否定されるべきものではない。だが、たとえ自分は使わなくても、AIが「すでにそこにある」社会となり、若い世代は日常での使用が当たり前だ。
部下を指導するためには、少なくとも「AIとはなんたるか」を知っておかなければいけない。管理職にとっては、悩みが増した時代かもしれない。(専門記者)