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毎日新聞2026/5/16 東京朝刊876文字
自宅で報道関係者の取材に応じる、袴田巌さんの姉の秀子さん=浜松市で2026年5月14日午後、照山哲史撮影
無実の人を迅速に救済する目的を果たすには不十分だ。国会審議を通じた法案修正が欠かせない。
再審制度を見直す刑事訴訟法改正案が閣議決定された。与党である自民党の事前審査で政府案への反対意見が相次ぎ、3度も修正を重ねる異例の事態となった。
最大の焦点は、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)の可否だった。審理を長引かせ、救済を遅らせていると批判されてきた。政府案は現状のまま抗告を維持していたため、議員から禁止を求める声が相次いだ。
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最終的には、原則禁止としつつ、「十分な根拠」がある場合は抗告できるようにする折衷案で決着した。一定の前進ではあるが、検察に抗告の道を残すことになる。
そもそも再審開始はやり直しの裁判を始める決定に過ぎず、検察は抗告できなくても再審公判で主張することが可能である。禁止するのが本来あるべき形だ。
検察側が持つ証拠を出させる制度のあり方も、さらに議論が必要だ。これまではルールがなかったため、検察は開示に消極的だった。福井市の女子中学生殺害事件で再審無罪の決め手となる証拠が開示されたのは、最初の再審請求から19年後のことだ。
再審制度の見直し法案を審査する自民党の部会で発言する鈴木馨祐・司法制度調査会長=東京都千代田区で2026年5月13日午後5時45分、滝川大貴撮影
改正法案は、裁判所が検察に証拠提出を命令する規定を設けた。だが、開示範囲に一定の制約をかけており、従来より開示の幅が狭まる事態も懸念される。
開示された証拠を再審手続き以外で使うことを罰則付きで禁じる規定も問題だ。過去には支援者が証拠を分析し、メディアが報道することで、再審の道が開かれたケースがある。関係者のプライバシーに配慮するためというが、個別に手当てすれば足りる。一律に禁じる規定は見直すべきだ。
法改正の契機となったのは袴田巌さんの冤罪(えんざい)事件だ。死刑確定から再審無罪まで44年かかった。改正法案はその反省を踏まえた内容となっておらず、冤罪被害者らの納得を得られていない。
国家の誤りを正す制度であるにもかかわらず、政府にはそうした強い意思がうかがえない。求められているのは、人権救済の「最後のとりで」に値する仕組みだ。国会の場で与野党が徹底的に議論する必要がある。