2017年09月21日 (木)
水野 倫之 解説委員
スマートフォンやそれに充電するモバイルバッテリーなどに使われるリチウムイオン電池が発熱したり、火が出るといった事故が急激に増えている。注意点について水野倫之解説委員の解説。
今年5月に兵庫県で駐車中に車が燃える事故があり、経済産業省が調べた結果、車内に設置されていたドライブレコーダーに内蔵されていたリチウムイオン電池から火が出た可能性のあることがわかった。火が出た原因ははっきりしていないが、メーカーでは被害の拡大を防ぐため今月、同じ型の製品、およそ8万5000台のリコールを届け出た。また先週も、JR山手線に乗っていた大学生のリュックサックから突然火と煙が出て、消火活動のため電車が運転を一時見合わせ。リュックサックの中にあった携帯電話の外付けの充電器、モバイルバッテリーが激しく焼けていた。リチウムイオン電池、ここ数年、発熱や出火といったトラブルが急増していまして、5年で470件。携帯電話やそれに充電する外付けのモバイルバッテリー、そしてパソコンの3つで半数以上を占めていて、中でも増えているのがモバイルバッテリー。リチウムイオン電池の事故がほかの電池よりも多いのは、ほかの電池に比べて電圧が高く容量が倍以上あって、寿命も長いから。その意味ではこのリチウムイオン電池優れもので、実は開発に日本人が大きく貢献していて、ノーベル賞の受賞の期待も。日本人の研究者水島公一さんがイギリスの研究者とともに、リチウムを酸化させてプラスの電極に使うと電圧が高く、寿命も長い電池を作ることができることを発見し1980年に論文発表。この成果に注目した吉野彰さんが1985年に、マイナスの電極に特殊な炭素を使えば発熱も抑えられることを突き止めた。2人の成果もあってリチウムイオン電池の基礎が確立。で、その仕組みなんですが、プラス極とマイナス極の間は特殊な液体に浸され、ショートしないよう特殊なフィルムで仕切られている。事故の中で最も多いのは製品自体の不良。去年11月、大阪で女性がベッドでモバイルバッテリーを充電中、発火する事故。調査の結果、製造の過程で電池内部に金属片が混入し、電極同士を分けていたフィルムが破れてショートし、発火したことがわかった。製品機構がモバイルバッテリーにあえて高い電圧で充電して事故を再現したが、煙を噴いた途端、破裂。しばらくするとまた破裂して炎が上がる。業界団体によると、メーカーでは異物が混入しないよう特別な施設で製造し、ホコリを吸い取るなど対策はしているが、特に海外で作られたものの中には製造過程での対策が甘く、ミクロン単位の異物が入ってしまうことがあるということ。注意点①として電池が異常に熱くなる、または膨らむといった現象があれば、内部に異常がある可能性が高いので、その場合はただちに使用を中止。ただこうした前兆がなく、いきなり破裂・発火することも。こうした製品は、リコールの対象となっていることも。注意点②リコール情報に注意。パソコンで、メーカー名、リコールと入力して検索。リコール製品の型番が出てくるので、自分の製品がリコール対象とわかったら、異常がなくてもただちに使用を中止。注意点③として、不意の事故を防ぐためにも就寝中に充電する場合は、ふとんのような燃えやすいところではなく、まわりに燃えやすい物がないところで充電。また使い方に問題があって、発火することも。特に、リチウムイオン電池に衝撃が加わると、電極同士がショートして発熱、発火するおそれあり。電池を何回も落としたり、スマホをポケットに入れたまま座ったりを繰り返していると、電池が変形するかも。注意点④として電池は衝撃を与えないよう注意。(水野 倫之 解説委員)