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毎日新聞2026/7/14 東京朝刊871文字
AI基本計画の改定案について議論する人工知能戦略専門調査会の会合=東京都千代田区で2026年6月26日、渡辺暢撮影
わずか半年で人工知能(AI)に対する認識は大きく変わった。リスクへの備えを万全にしなければならない。
政府がAI政策の指針となる「AI基本計画」を改定する。2025年12月に策定した現行計画との違いは、サイバー攻撃への危機感を強調したことだ。
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米アンソロピックが4月に公表した「クロード・ミュトス」は、システムの脆弱(ぜいじゃく)性を発見する能力が極めて高いとされる。犯罪集団の手に渡れば、金融や電力など重要インフラが破壊されかねない。
悪用を防ぐためミュトスは限定公開とされ、日本ではメガバンクや、電力インフラを供給する日立製作所など一部の企業のみがアクセス権を得た。自社システムを点検して未知の弱点を見つけ、その「穴」を塞ぐ作業を急ぐ。
こうした現状を踏まえ、新たな基本計画は「AIがもたらすリスクは相当に複雑化・深刻化している」との認識を示した。サイバー防御の強化を前面に打ち出し、AI管理の国際的な取り組みに主体的に関わる方針も掲げた。
技術発展の著しいAIを巡っては、多国間でのルール作りが急務となっている。ミュトスの登場は、最先端モデルの公開の可否を、誰がどう判断するかという問題を突きつけた。データを収集する際の人権・著作権保護や、悪質なフェイク動画の拡散防止対策に実効性を持たせるすべも問われる。
AI開発は、先行する米中2強による覇権争いの様相を呈している。管理の枠組みを両国だけに委ねては、開発する側に有利な内容となりかねない。日本は、利用する側の欧州や新興国と連携し、交渉力を高めるべきだ。
AIは次世代産業の柱になる可能性が高く、日本の得意技術にどう結びつけるかも課題だ。基本計画は、ロボットなどを自律的に動かす「フィジカルAI」に勝機を見いだす。米中と同じ土俵で競うのは難しく、現実的な判断だ。
ただ、AI推進は安全確保が大前提となる。基本計画は、安全性評価を担う機関「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」の強化も打ち出したが、人材不足が課題となっている。官民が協力して、基盤作りを進めることが肝要だ。