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毎日新聞2026/7/16 東京朝刊有料記事1307文字
2026年4月にJR北海道が自社単独で維持が困難な4割の営業区間で、土地、線路を自治体が管理して自社は運行に特化する上下分離方式を提案すると、衝撃が走った。路線維持のため、自治体に財政負担を求めるものだ。地域の足を守るためには自治体も対応せざるを得ないだろう。
同じような動きは日本全国の過疎地のバス路線で起こっている。バス路線が廃止・減便となり、自治体の支援により地域交通を維持する動きである。20年の総務省統計によれば、人が住める全国14万6159カ所の1キロ規模の地域のうち、25%が65歳以上の人口比率が半数を超える地域だ。いわゆる限界集落で高齢者向けに地域交通の整備は待ったなしである。
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すでに国土交通省が地域公共交通計画の策定や地域実証を主導し、自治体の支援により地域の事業者が運転し、小型のバンで住民の送り迎えをする「公共ライドシェア」事業も始まっている。乗降場所を柔軟に設定できるタクシーに近い利点もあり、今後、導入する地域は増えるだろう。
しかし、この方式が一時しのぎにならないように注意が必要である。自治体が財政負担することで成立しているからだ。どんな小さい地域でも年間を通じてサービスするには2人の運転手が必要となり、人件費は1000万円を超える。さらに燃料費、車両コストが上乗せされ、1日100人の住民を運んでも年間数百万円程度の収入にしかならない。そもそも乗客数が1日10人に満たない地域も多い。自治体が負担できる水準ならよいが、過疎化の進展で赤字額が膨らみ、行き詰まるリスクもある。
そこで、地域のエネルギー資源を使い、人の回遊を増やす事業モデルを提案したい。わが国には、水力、バイオマス、地熱といった「山の国資源」が豊富だ。これらを活用した電力、あるいは平地や洋上の風力発電の電力を電気自動車(EV)に蓄電し、地域の足として活用しながら、電力の余剰分を取引市場で販売するモデルである。電力の売り上げを増やせれば、EVは収益配分を得られ、交通事業の自治体負担を抑制できる。
その際、地域の生活や産業の改善につなげることが大切である。そうでないと過疎地がじわじわと衰退する状況は変わらない。鍵を握るのは、外部から現役世代の人材を受け入れる雇用を生むことだ。例えば、交通の行き先である観光施設や公共施設で人を集める食のイベントを提供する。もしくは水耕栽培と水産養殖を融合させた農業に取り組み、新たな産業拠点の創設を目指す。
交流結節点は人の行き交う交通機関のターミナルなどの空間だ。ここで提案したモデルでは、バスの停留所に人が集まり、交通と電力もつなげられる。そうなれば、コストを抑えながら、人が回遊する地域交通を成立させられるはずだ。北海道などでは、鉄道の駅を交流結節点にしてもよい。鉄道会社が自治体に事業への関与を求めるのであれば、収益性の向上や地域の観光や産業を再興させるプロジェクトも併せて考えるべきである。赤字を埋めるだけでなく、将来につながる対策を期待したい。
■人物略歴
瀧口信一郎さん
瀧口信一郎(たきぐち・しんいちろう)氏
米テキサス大MBA(経営学修士)。専門はエネルギー政策など。