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毎日新聞2026/7/17 東京朝刊889文字
録音・録画機材が配置された検察庁の模擬取調室(2008年当時)。録音・録画は06年から試験的に始まり、密室の取り調べを検証する手段になっている=東京都千代田区霞が関で08年3月21日午後3時36分、長谷川直亮撮影
検事が刑事責任を追及される異常な事態である。検察は猛省し、不当な取り調べを根絶すべきだ。
特別公務員暴行陵虐罪に問われた元大阪地検特捜部検事、田渕大輔被告の公判が大阪地裁で開かれている。取り調べの際に机をたたき、「検察なめんなよ」「(会社の)評判をおとしめた大罪人」などと罵倒、脅迫したとされる。
業務上横領事件の捜査の過程で起きた。不動産会社の元社長が逮捕・起訴され、無罪となった。
田渕検事が担当したのは元社長の元部下だ。問題となった取り調べを受けた後、検察の描いた事件の構図に合う供述に転じた。不当な取り調べは虚偽の自白を引き出し、冤罪(えんざい)を生むリスクをはらむ。
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信じがたいのは検察の人権意識の低さだ。取り調べの様子は録音・録画されていたのに、田渕検事は問題の言動に及んだ。公判では「陵辱・加虐の意図は全くなかった」と無罪を主張している。
捜査をチェックする他の検事や上司は録音・録画の内容を確認していた。にもかかわらず、組織内で問題視されず、元社長から告発を受けた後も最も軽い口頭注意で済ませた。社会の常識とかけ離れていると言わざるを得ない。
裁判所も検察に厳しい目を向けている。検察側は田渕検事を不起訴としたが、これを不服とした元社長の請求を受け、大阪高裁が刑事裁判で審理することを決めた。
別の事件で取り調べ相手に怒声を上げた元東京地検特捜部検事も刑事裁判を受けることになった。個人ではなく、組織全体の問題として受け止めなければならない。
取り調べは密室で行われるため、以前は問題があっても証明は難しかった。録音・録画によって検証できるようになったものの、一部の事件でしか義務付けられていない。警察を含め全面的に可視化する必要がある。
2010年に大阪地検で証拠改ざん事件が発覚し、強引な取り調べの問題も明るみに出た。その反省から検察改革が図られたが、教訓は生かされていない。
検察は捜査と起訴という強い権限を委ねられている。無実の人を罰して真犯人を逃がすことのないよう、知力を尽くし真相解明に取り組む。そうした基本に立ち返らなければ、信頼は取り戻せない。