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毎日新聞2026/8/5 東京朝刊有料記事607文字
モロッコからセウタに渡り、スペイン兵から水の配給を受けるために行列を作る人々=アフリカ北端のスペインの飛び地セウタで2日、ロイター
スペインが設置した浮遊式のフェンス周辺でパトロールするモロッコ海軍のボート=アフリカ北端のスペインの飛び地セウタで2日、ロイター
漢字の「城」は元々、都市を取り囲む土の城郭を指す。内側が城で外側が郭。敵を防ぐために街全体が城壁で囲まれていた。英語のウオール(壁)も古くは「街を囲む防御施設」を意味したという▲海で囲まれた列島にはそんな発想がなかったらしい。長安をモデルにした藤原京以来、都を囲む城壁は導入しなかった。もっとも世界標準は中国式。中世には欧州や中東にも城郭都市が広がっていた▲大砲の発達で高い城壁は無用の長物と化した。今に残るのは観光スポットだ。もっとも冷戦時代の鉄のカーテンのように「自他」を遮るための壁やフェンスは今も幅を利かせる▲「ベルリンの壁」崩壊後、イスラエルはパレスチナに「ガザの壁」を築いた。アフリカ北端のスペインの飛び地、セウタとモロッコとの国境にフェンスが作られたのも1990年代という▲7月末、モロッコから数万人がフェンスを越え海を泳ぎ欧州連合(EU)の一部であるセウタに押し寄せた。不法入国でも強制送還されないなど誤ったうわさが流れたらしい。スペインは大半を帰国させ、海にもフェンスを設置した▲2030年サッカー・ワールドカップ(W杯)はスペイン、ポルトガル、モロッコの3カ国が共催する。EUには移民に寛容なスペインの政策を批判する声も多いそうだが、移民やその子孫を排除しては代表チームの編成も容易ではあるまい。壁を高くすればすむわけではない。「城郭を設けず」は分け隔てせずに接する例えに使われる格言である。