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毎日新聞2026/8/5 東京朝刊有料記事1368文字
わずか1カ月あまりで、前代未聞の検察不祥事が相次いで明らかになった。法務・検察当局の内部では、いずれも検事が「常識」を逸脱しなければ防げた事態であり、個人のミスや資質の問題だと見る向きがある。しかし、問題を矮小(わいしょう)化させず、組織としての対応のあり方が適切だったのかも問われるべきだ。
1件目は検察審査会を巡る不祥事だ。毎日新聞は6月25日の朝刊1面トップで、山口地検岩国支部が今年1月に本来は秘匿すべき審査員11人の氏名を外部に流出させていたことを報じた。1948年の制度開始以降、審査員の個人情報の集団流出が明らかになるのは初めてだった。
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検察審はくじで選ばれた一般市民が審査員を務め、検察の不起訴処分の妥当性をチェックする機関だ。不起訴を法的に覆すことができる大きな権限を持つ。審査の結果によっては加害者や被害者から逆恨みされる恐れがあり、法律に明文規定はないものの、審査員の個人情報の秘匿は実務上の常識となっている。
だが、地検岩国支部はこれに反し、審査員への刑事告訴を不起訴にした際、処分通知書と理由告知書に審査員11人の実名を記載して告訴人に送付。支部長だった40代の女性検事が審査員の氏名を明記するよう担当者に求めていた。検事は当局の内部調査に審査員の氏名はオープンな情報だと思っていたと理解不足を認めたとされる。
報道に対し内部からは「そんなに大きく報道することか」「法律違反ではない」との声が聞かれた。
だが、安易に審査員の個人情報が漏れれば国民の協力が得られなくなり、制度の根幹を揺るがす重大な不祥事のはずだ。それなのに当局は審査員のプライバシーを理由に流出の事実を対外的に非公表とし、内部でも広く共有しなかった。
再発防止策として不起訴通知の様式を改定し、氏名欄そのものを削除した運用を5月下旬に始めたが、当局が問題を把握したのは2月。他の地検や高検に同じように理解不足の検事がいれば、この間にも問題が繰り返された恐れがあった。安易な非公表が当局の「当たり前」になっていないか、見つめ直す必要がある。
個人に矮小化するな
2件目は7月29日、西田将仁元検事(48)が自ら取り調べた元容疑者の女性と性的な関係を持ったとして懲戒免職処分を受けた問題だ。
事件関係者と私的に交友関係を持つことは捜査の公平性に疑念を抱かせるため、一線を引くことが常識だ。だが元検事は約2年にわたって関係を継続していた。
さらに衝撃だったのは、元検事は東京地検特捜部時代、2023年11月に発覚した自民党派閥の裏金事件で現場を指揮する主任検事(キャップ)を務めていたことだ。
特捜部は政財官の不正に毅然(きぜん)と切り込むことで国民からの信頼を得てきた。「検事として求められる責任感、倫理観、資質が備わっていれば当然避けられた」。東京地検幹部は処分後の記者会見でこう釈明したが、内部ではもともと元検事の登用に反対する声もあったと聞く。そんな常識を欠いた人物を要職に就けた組織の危機管理に疑問を突きつけた。
二つの不祥事は検察組織を大きく傷つけた。新人ではなく、10年以上の経験を重ねた検事という点でも深刻だ。信頼回復への道のりは容易ではなく、12日付で検察トップの検事総長に就く川原隆司東京高検検事長には重い宿題が課されている。