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毎日新聞2026/8/4 東京夕刊有料記事929文字
2014年6月9日に公開された英紙ガーディアンの記事。「ホームレス排除」を目的とした突起物に対し、当時のロンドン市長が撤去を求めたことを報じている(同紙ウェブサイトより)=小国綾子撮影
2014年6月、英ロンドンの集合住宅前に金属製の突起物がずらり埋め込まれている写真がツイッター(現X)に投稿され、大騒ぎになった。「ホームレス排除用のこの突起物はハトよけスパイクと同じ。人間が害鳥同然に扱われている」などの批判の声が上がり、撤去を求めるオンライン署名は12万人を突破。当時のロンドン市長も「開発業者は直ちに撤去すべし」と投稿し、突起物は騒動からわずか数日で撤去された――。
JR大阪駅前の約150個の突起物の写真を見て、ロンドンでのそんな騒動を思い出した。
大阪市による整備工事。コンクリートの地面にブロック状の突起物が並んでいる。つまずいて転んだら、大けがしそうだ。
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ここは元々、植栽エリアだった市有地。植物が育たず、放置自転車やごみの不法投棄が相次ぎ、野宿者の姿も見られるようになった。対策を求める住民の声もあり、市が立ち入り禁止にするため、突起物を設置する工事をしたという。
しかし「危険」「歩行者がつまずいていたのを見た」「ホームレスの人たちを対象にした『排除アート』だ!」などの批判が寄せられ、今はさらに立ち入り禁止のバリケードで囲まれている。
批判にあった「排除アート」とは何か。路上や公共空間にオブジェなどを設置することで、ホームレスの人たちの滞在やスケートボードの走行をできないようにする都市デザインのこと。私には、そんなものが「アート(芸術)」と思えないけれど。海外では「hostile architectures(敵対的建築物)」などと呼ばれている。
野宿者らがゴミをあされなくしたゴミ箱、眠れないベンチなど都市デザインに潜む排除の政治的意図を読み解いた米国の技術哲学者、ロバート・ローゼンバーガー氏は、著書「Callous Objects(冷酷な物体)」(未邦訳)で、ロンドンの突起物に触れている。それらの突起物は、物理的に野宿者をとどまらせないようにするだけではなく、<住まいのない人々はここでは歓迎されない、というメッセージを、きわめて露骨な形で伝えている>と書いた。
街は誰を歓迎し、誰を拒むのか。大阪の“玄関口”に並ぶコンクリートの突起物は、行き交う人々にどんなメッセージを伝えるのだろう。(オピニオン編集部)