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毎日新聞2026/9/2 東京朝刊有料記事1354文字
「年を越えて継続できる見込みとなりました」。4月末、高市早苗首相はポリエチレンなど石油化学製品の原料となる素材や、こうした素材を作るためのナフサの供給見通しについて語った。
それだけに、間もなくしてスナック菓子のパッケージが白黒印刷に変わった時は、国民に衝撃を与えた。プラスチックやインキなど石油化学製品の流通が滞るなどして「ナフサショック」という言葉も登場した。
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石油化学製品の原料の素材に欠かせないナフサは、原油を高温に熱するなど「精製」という過程を経て、ガソリンや重油などとともに取り出される。
輸入される原油の中東依存度は、2020年度から9割を超えていた。そのほとんどが、ホルムズ海峡を経由して届く。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖に伴うナフサショックは、中東産の原油に頼ってきた日本社会の「弱点」が浮かび上がった社会現象と言える。
そこで、政府が先月26日に公表したのが「エネルギー需給構造の強靱(きょうじん)化総合パッケージ」だ。
これまでも中東情勢は世界を揺るがし、日本も振り回されてきた。半世紀余り前の1973年10月、アラブ諸国とイスラエルが衝突した第4次中東戦争が起きると、国内では店頭からトイレットペーパーや洗剤が消えた。
当時、輸入原油の8割ほどが中東産。「原油が不足するのでは」という消費者の不安感による買いだめ、買い占めが原因だった。翌74年8月までの混乱は「第1次石油危機」と呼ばれている。
この教訓から、原油の国家備蓄や、石油会社による「民間備蓄」などが始まった。今年1月末の時点では7289万キロリットル、約8カ月分に当たる248日分の原油が備蓄されていた。
今春、中東情勢が緊迫してから、政府は備蓄していた原油を放出しながら、米国産など中東産以外の原油の確保に努めた。
第1次石油危機の時のように社会的な混乱が起きなかったことに、エネルギー政策を担う経済産業省の幹部は胸を張った。「備蓄制度が機能した、ということだ」
ただ、政府も現状の課題を認識していた。そこで、エネルギーの需給体制をより強化するため、今回、総合パッケージをまとめた。
ポイントは、輸入原油の「脱中東依存」ではない。米国産など中東以外からの原油だけでなく、中東産も含めてホルムズ海峡を経由しない原油の輸入を増やす「脱ホルムズ」だ。
中東産の原油は、供給面と価格面が安定している。また、原油は産地によって性質がかなり異なり、国内の製油所は中東産の性質に適した設備になっている。
そんな背景もあって、すぐに脱中東を目指すことは現実的ではないという。総合パッケージでは「脱ホルムズ」に向け、輸送費の支援などの対策が掲げられた。
ナフサ備蓄も課題
もう一つのポイントは、ナフサの備蓄だ。ナフサは蒸発しやすいので、年単位での長期の備蓄は難しい。このため、ナフサを精製するための原油を国家備蓄したり、石油化学製品の原料となる素材の供給体制を強化したりすることが盛り込まれた。
今回の中東情勢の緊迫化後、身近な問題のはずのエネルギー政策をどうすべきか、国民的な議論は乏しい。「お上」だけに任せず我が事として考える。総合パッケージが、そんなきっかけになればと思う。「歴史は繰り返す」。だとしたら、危機はまたやってくる。