部屋で話しましょう。 こういう込み入った話をするときに、 人目があるのは嫌なので。
挨拶もそこそこに、 彼女はこう言っていきなり僕を部屋へ案内した。
帽子やマスクで執拗に顔を隠していたことも踏まえ、 あの場では 「夫に内緒なのだろうか」
と勘繰ってしまったが、 実際 のところ彼女は見つかるわけにいかなかったのだ。
無論、 夫の知り合いにではない。 そうではなく、 ハイエナのどとく後を追ってくるマスコミにーだから夫婦の住まいを離れ、 あのホテルへ 身を隠していたのだ。
だって、 たしかに当時報じられていたではないか。 事前に嵐を察知したのか、
犯人の妻は夜逃げしたかのどとく雲れしてしまった、 と。 いや、 その他にも。
あ、 ごめんなさい。 たぶん、 かなりひどい顔してますよね。 異常とも思える疲れぶりは、 この "逃避行" のせいもあったに違いない。 というか、 むしろそ の状況下で平気な顔をしていられる方がどうかしている。 呆然として身じろぎ 一つできない僕だったが、 翔子の話は止まらない。
「この事実を知って、 私は母に詰め寄りました」 もしかして、 自分は猟奇殺人犯の娘なのかと。 「そうしたら、 ついに母は白状したんです。 あなたは精子提供によって生まれた子で、
決いて殺人犯の子ではないと-」 )
察知:さっち헤아려앎. 雲:くも구름. 逃避行:とうひこう 詰め寄り:つめもり다가서다. 猟奇:りょうき엽기.
白状:はくじょう자백.
방에서 이야기 해요.
―――그렇게 복잡한 이야기를 할 때에 남의 눈에 띄는 것이
싫기 때문에
인사도 하는 둥 마는 둥 하고, 그녀는 그렇게 말하고 갑자기
나를 방으로 안내했다. 모자랑 마스크로 집요하게 얼굴을
숨기고 있던 것도 근거로, 그 자리에서는 「남편에게 비밀인 건가?」라고 의심해 버렸지만, 실제로 그렇게 간단히 들킬 리는 없었다. 물론 남편의 아는 사람은 아니다. 그런건 아니고, 하이에나와 같이 뒤를 쫓아 오는 매스컴에―――그러니까 부부가 사는 곳을 떠나, 어느 호텔에 몸을 숨기고 있었던 것이다.
그럴지라도, 분명 당시 알려져 있던 것은 아닌가.
사전에 소동을 눈치를 챘던 것인지, 범인의 처는 야반도주로
자취를 감추어 버렸다, 라고.
그래, 그 밖에도.
――――아, 미안해요. 아마 꽤 힘든 얼굴을 하고 있지요.
이상하다고 생각되는 피로한 기색은, 그 ”도피행”탓도 있었던것이 틀림없었다. 뭐랄까, 오히려 그 상황아래서 태연한 얼굴을 하고 있는 편이 좀 이상한 것이다.
어리둥절해서 몸을 꼼짝 할 수 없었던 나였지만, 쇼코는 이야기를 멈추지 않았다.
「그 사실을 알고, 저는 엄마를 몰아 부쳤어요」
어쩌면, 자신은 엽기 살인범의 딸 이냐고.
「그렇게 했더니, 마침내 엄마가 자백을 했어요. 너는 정자 제공으로 태어난 아이 이고, 결코 살인범의 아이가 아니라고」