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ビゴ氏はトランプ政権への説得は「急を要する」と強調。2018年の米予算案ではITER関連経費は前年比で半分近く減った。ITERは加盟国が分担して装置などを製作するため、ビゴ氏は1カ国で遅れが出れば「全体に即座に影響する」と指摘し「仮に(米国で)2年で良い決定がなされたとしても手遅れになる」と危機感をあらわにした。今後日本の負担に影響が出る可能性もある。
また15年7月のイラン核合意後に本格化したイランのITER参加交渉にも米国が影を落とす。ビゴ氏によると、イランはITER側にパートナー国として10年間の資金拠出と早期の参加意向を伝えたが、核合意に懐疑的なトランプ政権の方針が定まるまでITER内部での議論を「保留」していると明かした。
一方、19年3月末にEUを離脱する英国は、欧州原子力共同体(EURATOM)も同時に脱退する意向だが、ITERに残留するかは明らかにしていない。ビゴ氏は英政府が今年6月末、国内の核融合実験施設に20年までの予算措置を条件付きで講じる方針を公表し「核融合研究にとどまる強い意志」を示したと評価。同時期に英政府側から非公式にITER残留を示唆する文書が届けられたといい「英国の残留は(ITERと)ウィンウィンの関係だ」と述べた。
200億ユーロ(約2兆4000億円)規模のITERの総経費のうち建設段階では欧州が約45%、日本を含むその他6加盟国は各約9%を負担する。【サンポールレデュランス(フランス南部)で八田浩輔】
【ことば】国際熱核融合実験炉(ITER)
原子核どうしを高速でぶつけ合い異なる原子核を生む「核融合反応」で生じるエネルギーの利用を目指す実験施設。1985年の米ソ首脳会談が計画の発端で、日米欧など7カ国・地域が加わるITER機構が運営を担う。誘致交渉の末、2010年夏に仏南部で着工。核融合は太陽の光の源で「地上の太陽」とも例えられ、今世紀後半の実用化を目指すが課題は多い。核分裂反応を利用する通常の原子力発電とは異なり、高レベルの放射性廃棄物は発生しないとされる。