毎日新聞 2022/7/11 東京朝刊 有料記事 724文字
川崎重工業が部品を研究開発している水素飛行機の完成イメージ=同社提供
なるほドリ もうすぐ夏休みだね。今年は新型コロナウイルスの移動制限(いどうせいげん)もないって聞いたよ。飛行機に乗る旅行客も増えそうだけど、環境への影響はどうなの?
記者 現在、世界の空を行き交(か)う「ジェット機」の燃料は原油から作られていて、エンジンで燃焼後(ねんしょうご)に二酸化炭素(CO2)と水蒸気が出ます。CO2は地球温暖化(ちきゅうおんだんか)の原因になっていて、飛行機に乗ることは「飛び恥(はじ)」とも批判されます。そこで、クリーンな燃料と言われている液体水素を使った飛行機の開発が進んでいます。
Q どんな飛行機なの?
A 水素を燃焼させてできる高温の気体を吹き込み、エンジンを動かす「水素飛行機」です。CO2の排出はゼロです。
Q 開発は難しくないの?
A 水素は燃焼する時に出すエネルギーが、ジェット燃料より大きくなります。このため、強く燃えることがありますが、弱く燃えることもあります。燃焼の強さを適度(てきど)に、かつ一定に調整するために、エンジンや燃料を供給するポンプなどの構造を工夫しなければなりません。液体水素も、マイナス253度まで冷やさないと蒸発して気体になってしまいます。その温度に保(たも)つ特殊な素材や構造のタンクが必要です。
Q どこが開発をしているの?
A 日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や川崎重工業がエンジンやポンプ、タンクなどの開発に取り組んでいます。両者とも100~150人乗りの中小型機向けを想定し、飛行距離は2000キロから三千数百キロまでを目指しています。世界レベルで開発が先行しているのは欧州の航空機メーカー・エアバスで、2035年の運航開始を計画しています。(科学環境部)