毎日新聞 2023/3/17 東京夕刊 有料記事 452文字
2022年に京都市京セラ美術館で開催された「ワタシの迷宮劇場」展示風景。使われたカーテンは高品質の特注品で、2500平方メートル分ある=同館で、野原由美撮影
断捨離ブームと言われて久しい。テレビで、書店で、「断捨離」の文字を目にするたび、ものを捨てられない性分の私は肩身の狭い思いをしていた。昨秋、現代美術家の森村泰昌さんによるユニークな企画を取材するまでは。
森村さんの「捨てられない」は筋金入りだ。空のペットボトルですら「袖振り合うも」と、なかなか捨てられないという。だから、結構使い捨てのものが多い美術展の終わりには、いつも心を痛めていた。昨年、個展で大量のカーテンを展示壁として使用した森村さんは、「アート・シマツ」なる企画を始動。カーテンを再利用するアイデアを公募した。
それから約5カ月。東京・渋谷のパルコで、その後を追う「アート・シマツの極意」展が始まった。ひびのこづえさんら11組の作家による作品が並び、漫才コンビ・ナイツのスーツやスカーレット・オハラ風子ども用ドレスもある。切り売りを買って帰れば、誰でもこの後始末計画に参加することもできる。アート・シマツの心が広がってほしいと、入場は無料。「捨てられない」も捨てたもんじゃない。【山田夢留】