毎日新聞2024/7/4 東京朝刊有料記事503文字
除斥適用除外、評価 福岡大法科大学院教授(民法) 石松勉氏
最高裁判決は、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用せず、被害者の救済を図った点で評価できる。判決が指摘したように、旧優生保護法の規定が違憲で、改正後も速やかな補償がなされなかった今回の被害者の救済の必要性は非常に高いという考えを出発点にし、除斥期間の適用が著しく正義・公平に反するという結論に結び付けた印象だ。
旧法を巡る訴訟ではこれまでも除斥期間の適用を認めなかった高裁判決はあったが、別の規定を用いて猶予を延ばした形で、全面救済には限界があった。
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そのため、今回の判決のポイントは除斥期間に関する判例を変更したことにある。損害賠償請求権を消滅させるためには当事者の主張が必要という新たな枠組みを設け、その上で今回の国の主張が信義則違反や権利乱用にあたるとして除斥期間の適用を認めなかった。
権利乱用などの判断は、個別具体的な事情が大きく影響するため、今回の判決が、同様に除斥期間が争点になっている別の訴訟にただちに影響を及ぼすとまでは言えないと思うが、適用除外の道が開けたとは言えるだろう。【聞き手・三上健太郎】