来年度から15%程度の電気料金値上げを検討している東京電力が、値上げの期間を3年間と想定していることが13日、分かった。定期検査で停止中の原発が3年以内に再稼働すれば、火力燃料費の増加という値上げの理由がなくなるため。値上げが終了する2015年度には、削減中の社員賞与の水準を元に戻すことも検討している。
東電は、これらの意向を、原発事故の損害賠償に向けて同社の資産を調査している政府の「東電に関する経営・財務調査委員会」に、非公式に伝えた。調査委では、東電のそもそもの電気料金の算定について「過去の電気料金の見積もりが過大」と批判が出ている。
東電は原発停止に伴い、火力発電を増やし対応している。燃料費は年間1兆円ほど増える見通し。15%値上げの場合、標準家庭で月7千円弱の電気料金が1千円ほど増える計算になる。
東電の原発は17基あり、事故で停止中の福島第一、第二を含め、15基が停止中。稼働中の柏崎刈羽5、6号機も、来年3月には止まる見通し。東電が3年間のうち、何基が再稼働すると想定しているかは不明。
一方、東電は、賠償や事故対応の費用を捻出するリストラの一環として、7月から一般社員の賃金の5%、賞与の5割を削減中。賃金カットは賠償が終わるまで続ける方針だ。
東電は、国から賠償の支援を受けるため、官民で出資する原子力損害賠償支援機構と一緒に、リストラ策などを盛り込んだ「特別事業計画」を10月中に策定する。調査委が9月中にまとめる報告書は、特別事業計画に反映される。
料金値上げをめぐっては、枝野幸男経済産業相が13日の記者会見で「東電のコストは十分な縮減の努力がされていない」と批判。「同じような問題は他の電力会社にもあるとみられる」と指摘している。
枝野経産相の発言は、電気料金を決める「総括原価方式」にメスを入れる考えを示したものだ。この方式は東電以外の電力各社も同じであるため、東電の値上げの行方を各社は注視している。
(福田直之)
◆キーワード
<総括原価方式> 電力会社が電気の供給に必要な年間費用を事前に見積もり、それを回収できるように料金を決めるしくみ。政府が電気事業法で定めている。「事業報酬」と呼ばれる一定の利潤も費用に上乗せされるため、安定経営を支える制度になってきた。一方で、電力会社は地域独占で競争が少ないため、費用の削減努力につながらず、経営の効率化をはばむ一因にもなっている。
政府税制調査会(会長・安住淳財務相)は、震災復興にあてる臨時増税について、来年度から法人税率を5%幅引き下げたうえ、3年間に限って4%強を増税し直す方針を固めた。残りの財源は所得増税を中心とし、増税期間を5~15年とした場合の複数の選択肢を示す。
復興には今後5年間で追加で15・5兆円のお金がかかる。5兆円分は、子ども手当の減額や財政投融資特別会計の剰余金、政府保有株の売却などで捻出し、10兆円強を臨時増税でまかなうことを想定している。
法人税は、今年度から国と地方を合わせた実効税率を40・69%から5%幅引き下げる予定だったが、「ねじれ国会」で法案審議が進まず、実現していない。これを来年度から実施し、このうち国税にあたる4・2%程度を臨時増税として徴収することを検討。本来の減税に見合った歳出抑制を想定するため、3年間で計2兆円程度の財源が出る。
一方、所得税は、納税額の一律10%の上乗せ(定率増税)で、年1・4兆円の税収増が見込める。5年間続ければ、7兆円が工面できる。だが、政府税調内には、個人負担増が大きいとの意見がある。増税期間を延ばせば1年あたりの増税額は少なく済むため、5~15年の間で、期間に応じた引き上げ幅を示す。税調幹部は「期間を延ばせば、所得増税は月に数百円程度で済むのでは」との見通しを示した。他の税目では、たばこ税を1本2円程度増税する案も挙がっている。政府税調は複数の増税案を週内にまとめる予定。政府・与党が調整し、与野党協議も急ぎたい考えだ。
1998年に経営破綻(はたん)した日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の粉飾決算事件で、東京高検は13日、差し戻し後の控訴審判決で無罪となった旧経営陣の3被告について、最高裁への上告を見送ると発表した。起訴から12年を経て、3人の無罪が確定。これにより、バブル経済後に破綻した金融機関の経営陣の責任を問う一連の刑事・民事の裁判は、すべて終結した。
旧証券取引法違反の罪に問われていたのは、窪田弘・元会長(80)と東郷重興・元頭取(68)、岩城忠男・元副頭取(73)。98年3月期決算で、約1592億円分の回収不能な貸出金を損失処理しなかったとして99年に起訴された。一審・東京地裁、二審・東京高裁は有罪としたが、2009年に最高裁が審理を差し戻した。先月30日にあった差し戻し後の東京高裁判決は、当時の会計慣行を考慮し、経営判断の裁量を幅広く認め、3人とも無罪とした。
東京高検は「無罪判決には不満は残るが、明確な上告の理由を見いだせなかった」と説明した。
東京地検特捜部などによる刑事責任の追及とは別に、破綻金融機関の経営陣への民事上の責任追及は、整理回収機構などの手で訴訟が進められ、昨年末までにすべてが終結している。
全国銀行協会は、東日本大震災の影響で企業が支払期日に手形の決済ができない場合、不渡りとして扱わない猶予措置を、少なくとも年内いっぱい続ける方針を固めた。企業が余裕をもって再建に取り組めるようにする。雇用維持にも一定の効果が出るとみられる。
通常は不渡りを2度出すと銀行取引が停止され、多くは倒産する。猶予は震災直後、全銀協が全国の金融機関に要請。当初は阪神大震災と同じく、猶予期間を半年程度とすることも想定していたが、震災の影響の大きさから延長を決めた。
全銀協によると今年3~7月の不渡り件数は岩手、宮城、福島3県だけで前年同期の約4倍の約3千件。取引停止件数は29件。東北を中心に、多くの企業が不渡り猶予の恩恵を受けているとみられる。
(寺西和男)
能登半島沖の日本海で13日、小型船に乗った脱北者とみられる9人が保護された問題で、責任者を名乗る男性が第9管区海上保安本部(新潟市)の聴取に「8日に北朝鮮の東海岸を出た」と説明していることが分かった。韓国を目指す途中で針路を外れ、日本領海まで来てしまったとみられる。
海上保安庁と9管によると、9人は成人の男性3人と女性3人、10歳前後の男児3人。石川県輪島市の輪島港の東北東約16キロの日本の領海内で保護された。責任者を名乗る男性は「お互い家族、親類関係だ」と説明したという。
9管は海上保安庁法に基づく「海難救助」として9人を保護し巡視船で金沢港に移送。税関が小型船を調べたところ、密輸品や危険物などは見つからなかった。
9管は同港付近で停泊中の巡視船内で9人の事情を聴くとともに、法務省入国管理局などとともに上陸に向けて調整、14日以降も連携して調べる方針だ。
韓国の外交通商省関係者は「日本の調査結果を待ち、報告があれば、必要に応じて政府関係者による聴取を検討したい」と話した。意思が確認されれば、人道主義に基づき、韓国入国を認めることになるという。
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藤村修官房長官は13日の記者会見で、「海上保安庁が事実関係を調査中だ」と説明した。玄葉光一郎外相は同日夕、韓国亡命の意思を示したとされることについて「確認していない」と述べた。外務省は、9人の韓国亡命の意思が確認できれば、韓国政府に受け入れを打診し、調整に入る方針。
過去の例では2007年6月に、脱北者4人が青森県に上陸。4人は韓国へ亡命を希望、当時の安倍政権は「一時庇護(ひご)上陸許可」を出し、韓国に出国させている。
能登半島沖の日本海で、木造の小型船に乗った9人が保護された。脱北者とみられ、韓国行きを望んでいるという。9人は何者なのか。なぜこの時期に日本の近海に漂流してきたのか。
石川県輪島市沖。日本海を漂う小さな木造船を最初に見つけたのは、タイやメバルの刺し網漁に向かっていた漁船だった。船体にはハングルが見えた。不審に思い、漁協の地元支所や海上保安庁に通報。海保の巡視船艇が到着するまで約2時間、7隻の漁船が取り囲むようにして追い続けた。
海保によると、船は全長約8メートル。木造で屋根もない。船尾には赤いエンジン。「助けを求めていた」。海上保安官が到着した時、そう語ったリーダー格の男性の言葉には北朝鮮のなまりがあったという。
船内に残っていた軽油は約60リットル。今月8日に北朝鮮の東海岸を出港したときには180リットルを積んでいたという。ポリタンクに30リットル積んでいた水もほとんど残っていなかった。あとは少量の米とキムチ。船内で煮炊きをしていたとみられる。
海保の幹部は「よくこんな小さな船で渡ってきた」と驚きを隠さない。
保護された9人を乗せた巡視船は13日夜、金沢港付近に停泊している。船内では入国手続きが進められているという。法務省入国管理局によると、通常は有効な旅券を所持して空港や港で入国審査を受けなければならないが、今回のケースでは、9人の申請に基づいて「一時庇護(ひご)のための上陸許可」を出す可能性が高いという。最終的に韓国への渡航を望んでいるが、日本を経由しないで、自力で向かうのは困難なためだ。
庇護のための上陸許可は最大で6カ月。「生命や身体の自由を害される恐れから日本に逃れてきた」などの要件を満たす必要がある。
海保は、海保の施設で保護して脱北の経緯を聴くなどする予定だ。亡命の意思がはっきりすれば、外務省などが韓国側と協議に入る。その間は入管が指定した施設に滞在するという。
2007年6月、青森県深浦町の深浦港で脱北者4人が見つかった際は、仮上陸許可の後に一時庇護上陸許可が出された。4人は茨城県の入管関連施設に移され、2週間後に韓国に移送された。元東京入国管理局長で、「移民政策研究所」所長の坂中英徳さんは青森の事例を踏まえ「人道的な措置として上陸を認めたうえで韓国など第三国に引き渡すのがいいだろう」と話す。
●韓国流入2万人超
北朝鮮から逃れて韓国に来る脱北者は増加傾向にある。韓国統一省によれば、昨年末までに累計で2万人を超え、今年も数千人に達する見込みだ。中朝国境を越えて中国に脱出したケースがほとんどだが、中国政府によって送還されることを恐れ、さらにモンゴルや東南アジアに抜けた人たちもいる。韓国政府は今年7月、脱北者の定着を支援する施設「ハナ院」の第2院の建設に乗り出した。
脱北者が後をたたない背景には、地方を中心とする北朝鮮の厳しい食糧事情に加え、最近は、豊かで華やかな韓国の暮らしへのあこがれもあると言われる。韓国の脱北者団体関係者によると、最近、中国から携帯音楽プレーヤーやタブレット型携帯端末なども北朝鮮に流入し、若者を中心にK―POPや韓流映画を楽しんでいるという。
ただ、中朝国境ルートは、年間の脱北者が初めて2千人を超えた2006年ごろから警備が一層厳重になったとされる。海上ルートも容易ではない。元北朝鮮軍将校の脱北者は「海上も統制は厳しく、韓国側までたどりつくのは年間でも1、2件。失敗する例も多いはずだ」と指摘する。
別の脱北者団体関係者は「中朝国境での当局による捜索が厳しくなったうえ、わいろなどの経費もかかる。場所によっては海からの脱北を試みる人が今後も続くのではないか」とみている。
(ソウル=中野晃)
●中朝越境はいま難しい 貧しい生活層とは違う
脱北者や北朝鮮内部への取材を続けるジャーナリストの石丸次郎さんは、軍関係者が関与している可能性を指摘する。「漁業は外貨稼ぎの手段として軍が利権を握っており、船もどこかの傘下のものを買うなり、盗むなりしないと手に入らない」ためだ。そのうえで「警備強化で中国へ国境を越えることが難しくなり、海から脱出を試みたのだろう。韓国に向かおうとしたが、海流に流され日本に着いた可能性が高い」と推測した。
山梨学院大学の宮塚利雄教授(朝鮮近代経済史)が注目するのは船と持ち物だ。「相当量の軽油やエンジン付きの船、米などを用意出来ている。あまり貧しい生活層ではないと考えられる」。また、8日午前に出発したと説明している点について「北朝鮮は9日に建国63周年を迎え、平壌で軍事パレードがあった。都市部が高揚感に包まれて沿岸警戒が薄まるタイミングを狙ったのではないか」とみる。
北朝鮮の人権問題に詳しい李英和(リヨンファ)・関西大教授(北朝鮮経済論)は「北朝鮮は『強盛大国の大門を開き、来年には国民の生活がよくなる』と宣伝している。しかし、来年も暮らしは好転しそうにない。そんな状況を見越しての脱北ではないか」と話す。
野田佳彦首相の13日の所信表明演説は、大げさな言葉も少なく、簡素な言葉と低姿勢で、震災復興や経済の立て直しへ与野党協力の必要性を訴えた。だが、野党は臨時国会の会期や鉢呂吉雄前経済産業相の後任に枝野幸男氏を起用したことに反発。早くも態度を硬化させた。
「福島で最期を過ごす。それが私の夢なのです」
演説で首相が力を込めたのが、このくだりだ。佐藤雄平・福島県知事から手渡されたDVDに収録されていた高校生の劇中の言葉だ。所信をまとめるうえで、首相は「まずは現場をしっかりみたい」とこだわり、就任間もない8日から3日連続で被災地入り。東日本大震災や豪雨の被害を自分の目で確かめた。
従来の所信と同じように、各省から政策を集めて原稿をまとめる「短冊方式」を取ったが「被災地のくだりは、首相が何度も筆を入れた」(周辺)。鉢呂氏の辞任にも触れ、「不適切な言動によって辞任した閣僚が出たことは誠に残念」。
「戦後行政の大掃除」(菅直人前首相)、「日本の歴史を変える」(鳩山由紀夫元首相)といった過去の政権の所信にちりばめられた大言壮語は少なく、目を引くのは持論の「フロンティア開拓」ぐらいだ。文字数も約9500字と、鳩山氏(1万3千字)、菅氏(1万1千字)よりも絞り込んだ。「なるべく簡潔に」というのが首相の指示で、演説時間を30分程度に収めるため、あえて削った政策もあるという。
首相が力を込めて読み上げたもう一つは、野党との「対話と理解」のくだりで、ときおり野党席を向き、深々と頭を下げた。勝海舟の「氷川清話」から「正心誠意」という言葉も引用。「愚直に一歩一歩、粘り強く全力で取り組む」として、野党の理解と協力を求めて演説を締めくくった。
●自公は再び硬化
野田首相の「正心誠意」とは裏腹に国会運営は強引だ。第3次補正予算の編成や首相の外交日程を確保するため、13日の衆院本会議で臨時国会の会期をわずか4日間で閉じる日程を議決。東日本大震災で「通年国会」の主張もあった菅政権とは様変わりした。
野党との合意がないままの議決は1990年以降は08年の1回のみ。会期は、衆院解散のために召集した国会を除けば現行憲法下で2番目の短さだ。民主党の輿石東幹事長は13日の参院議員総会で「異常な事態になっているのは事実」とあいさつした。
平野博文国会対策委員長は13日の記者会見で「本会議という一番の権威で代表質問にきちんと答弁する」と強調したが、新首相が選ばれた直後の国会では、首相や閣僚と論戦を交わす予算委員会を開くのが通例だ。輿石氏は閉会中に衆参で2日間ずつの予算委員会を開くことで野党との妥協を探るが、時期については「10月になってからでいい」(民主党幹部)との声が漏れる。
こうした政権の姿勢とともに、鉢呂氏の後任に、菅政権を中枢で支えた枝野氏を起用したことに野党は反発を強めている。
自民党の谷垣禎一総裁は13日、「『正心誠意』とおっしゃるなら、国会で誠心誠意、議論するという姿勢を具体的に示していただきたい」と批判。補正予算の編成に向けて輿石氏が「各党にボールは投げている」とした与野党協議にも簡単に応じるつもりはない。谷垣氏は「国会は都合が悪いから逃げ、都合のいいところだけ協議してくれというのでは物事は進まない」と記者団に強調した。
復興政策で民主党に協力する姿勢を打ち出していた公明党も一転、態度を硬化させた。山口那津男代表は同日、「本当に対話や協力を語る資格があるのか」と厳しく批判。枝野氏起用について、井上義久幹事長は党両院議員総会で「なぜ菅内閣が退陣し、野田内閣が誕生したのかという深刻な反省がなければ、新しい内閣と一緒に仕事できない」と断じた。
東京電力が15%程度もの料金値上げを検討し、原発事故の賠償が終わる前に社員の賞与カットをやめようと考える背景には、「お手盛り」との批判がある電気料金によって甘やかされてきた企業体質がある。
「これまで言われてきたコストが、本当に適正なのか」。枝野幸男経済産業相は12日の就任記者会見でこう述べ、料金を決めるコスト(費用)計算の見直しの必要性に言及した。
電力会社は「総括原価方式」と呼ばれる方法で電気料金を決める。人件費、燃料費、修繕費などの費用を積み上げ、そこに「事業報酬」と呼ばれる利潤を上乗せする。事業報酬は、発電所などの総資産額に3%程度の報酬率をかけて算出。つまり、原発建設などで資産を膨らませるほど、事業報酬も増えるしくみだ。
総括原価方式だと、赤字になる心配がない。輸入に頼る石油や液化天然ガス(LNG)の価格変動リスクが残るが、「燃料費調整制度」によって燃料費の変動を料金転嫁できるしくみになっている。さらに営業面でも事実上の地域独占状態にあるため、経費節減の意識は低い。
東電が今回、値上げを検討しているのは、原発停止で火力発電に使う燃料費が増えるためだ。ただ今後は、東電に限らず、原発事故の賠償費用も料金の押し上げ要因になる。電力各社が原子力損害賠償支援機構に払う負担金が、料金計算の基礎となる総括原価に含まれるためだ。
電気料金はかつて、国の認可制だったが、電力自由化の一環で1999年に制度改正された。値上げ時のみ、政府が原価構成を点検する認可制が残り、値下げ時は点検のない届け出制になった。電力各社は制度改正以降、値下げを続けている。原価の妥当性は近年、第三者によって点検されていないのが実情だ。
そんな電気料金のあり方を、政府の「東電に関する経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)は問題視する。東電の発電費用の見積もりの中に実績を上回り続けている項目があり、下河辺委員長は「過去10年分を累積すれば、(その差は)看過できない」と指摘。関係者は、調べた項目のうち、見積額が実績を下回る項目は「一つもなかった」と明かす。
6日の調査委では、「広告費や業界団体への支出も料金原価に入れるべきか否か検証が必要」「料金システムの透明性の確保を」など、制度の問題点を指摘する意見が出た。調査委は今月末にまとめる報告書に、こうした課題を盛り込む見通しだ。
(中川透)
ワールドカップ優勝に続き五輪出場も決めた女子サッカー日本代表が、企業からも引っ張りだこだ。13日には、前日に中国から帰国したばかりの「なでしこ」たちが、起用の決まったテレビCM発表会に登場した。
東京都港区のホテルで開かれたサンヨー食品「サッポロ一番」のCM発表会には沢穂希、川澄奈穂美、海堀あゆみの3選手が出た。サンヨーは今回、3人が所属する「INAC神戸レオネッサ」とスポンサー契約も結んだ。
この日はファミリーマートも、川澄選手らを招いて発表会を開催。総菜のCMで、カギとなる若い女性にアピールするため、同世代を起用した。上田準二社長は「彩りが良く、味わいも深くて元気が出る。なでしこの選手は、商品のコンセプトにぴったりだ」。川澄選手は「日本が元気になるために協力したい」と語った。
原子力発電にかかるコストは従来より高い1キロワット時12~7円台になるという試算が、13日に内閣府の原子力委員会(近藤駿介委員長)に報告された。電力業界の試算で、これまで5円台とされてきたが、原発の稼働率の低下や建設費の上昇などの影響を考慮すると上がったという。
新たな試算でも原発は他電源より安いか、同じくらいだったが、東京電力福島第一原発の事故で今後見込まれる安全確保の費用を考えれば、コストはさらに高くなる可能性もある。
地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾システム研究グループリーダーの報告によれば、原発の稼働率が60~85%の場合、1キロワット時あたりの発電コストは12・5~8・1円(2005年)になった。
日本エネルギー経済研究所の松尾雄司主任研究員も、原発や火力発電のコストを試算した結果を報告。06~10年度の平均発電コストでは、原発が1キロワット時7・2円、火力発電では10・2円になるという。
電気事業連合会が03年に公表した試算は、1キロワット時5・3円。天然ガス火力発電の6・2円などと比べ「遜色ない」としていた。ただ80%という高い稼働率が前提。稼働率は不祥事による運転停止などで、最近は低下傾向にある。10年度は67・3%だった。
秋元さんは「原子力コストは比較的安価。ただし、原子力関係者は、理想的な原発の発電コストだけ見せてきた面があるが、実際のコストには幅がある」と話した。こうした電源別のコストは今後、政府のエネルギー・環境会議で議論される予定だ。(小堀龍之)
落ち葉を取り除けば、森林の地表では最高で9割の放射性セシウムの汚染度を減らせる――。こんな調査結果を、文部科学省の研究チームがまとめ、13日に公表した。福島県は7割以上が森林で覆われている。東京電力福島第一原発事故による広大な汚染地域の除染の見通しは立っていないが、取り組みを進めるうえで手がかりになるという。
筑波大の恩田裕一教授や気象研究所などのチームは6~8月、文科省から研究費を受けて、計画的避難区域に指定されている川俣町山木屋地区の3地点の森林で土壌の汚染度や大気中の放射線量を調べた。対象は、ナラガシワなどの広葉樹林と、杉の樹齢が18年(若齢林)と、40~50年(壮齢林)の針葉樹林。
この結果、土壌のセシウム134と137の汚染度の合計は、広葉樹林が1平方メートルあたり71万ベクレル、杉の若齢林が47万ベクレル、壮齢林は91万ベクレルと、チェルノブイリ原発事故での「強制移住」レベル(55万5千ベクレル)の汚染だった。このうち、広葉樹林と若齢林はセシウムの9割が表面の落ち葉に蓄積され、土壌には1割しか浸透していなかった。
一方、樹間が広い壮齢林では土壌への蓄積量は5割程度だった。
また、森林に雨が降ると、葉や枝に付着した大量のセシウムが土壌に落ちていることも分かった。森林の外の雨水の放射能濃度は1リットルあたり1ベクレル以下でも、事故当時すでに葉が茂っていた針葉樹林に降った雨水は最高585~806ベクレルとなり、飲料水の規制値200ベクレルを超えていた。
今回のデータは森林公園といった人が頻繁に出入りするような場所での効率的な除染や、除染の優先順位を考える際に生かせるという。恩田さんによると、調査地域の周辺は森林を裏山にもつ家屋も多い。「家の周りだけ除染しても森林からの影響が考えられる。落ち葉や針葉樹林の枝葉を取り除くなどの対策に生かしてほしい」と話している。(岡崎明子、佐藤久恵)
福島県内で働く保健師約100人が5月の1カ月間で被曝(ひばく)した合計線量は平均約0・1ミリシーベルトだったという調査結果を国立がん研究センターなどが13日、発表した。個人線量計を身につけて実測してもらった。屋外滞在時間と線量の相関関係はなかった。
保健師は避難所巡りや家庭訪問など屋外に出る時間が少なくない。同センターと、保健師の渡會睦子東京医療保健大学准教授が、東京電力福島第一原発周辺の5地域の保健所などで保健師の被曝線量を調べた。
一番高いのは南相馬市や浪江町、飯舘村などを管轄する相双保健福祉事務所の保健師で、0・7ミリシーベルトだった。年間線量に換算すると8・4ミリシーベルト。
空間線量の高い南相馬市などでの被曝線量は、比較的低い田村市より高い傾向がみられたが、同じ地区内で比べると、屋外にいる時間が長ければ被曝線量が多くなるといった傾向はみられなかった。
嘉山孝正・国立がん研究センター理事長は「福島県は県民の健康調査で、行動調査から過去の被曝量を推計しようとしているが、行動だけではきちんと推計できない可能性がある。実測が必要だ」と指摘する。(大岩ゆり)
東北電力管内(東北6県と新潟県)で13日、需給が逼迫(ひっぱく)し、午後2時台にピーク時の供給力に対する使用率が94%に達した。東北電は、この日の「でんき予報」で8月10日以来約1カ月ぶりに「大変厳しい」との表現を復活させ、節電を呼び掛けた。
今月9日に管内の電力使用制限令が終わり、産業界の需要が増加。13日は東北南部で気温が30度を超え、冷房需要も伸びた。このため、東京電力からの融通電力を当初予定の30万キロワットから70万キロワットに増やし、供給力を1216万キロワットとした。最大電力は1143万キロワットだった。(西村宏治)
ウィーンで開催中の国際原子力機関(IAEA)理事会は13日、東京電力福島第一原発事故を教訓に、世界の原発の安全性向上をめざす行動計画を全会一致で採択した。外交筋によると、議論で、計画を支持する国が大勢を占めたが、脱原発派の国などには「期待したほど強い表現にならなかった」として、将来的に厳しい内容に見直すべきだとの意見もあったという。天野之弥(ゆきや)事務局長は12日、「原子力安全の強化に向け重要な一歩」と成果を強調し、加盟国が自国の原発の安全強化に早急に取り組むよう促した。(ウィーン=玉川透)
東京電力は13日、福島第一原発3号機原子炉建屋の地下にたまっている高濃度の放射能汚染水は約5700トンだと発表した。この日、この建屋の地下水位を初めて測定できた。今回測定した原子炉建屋の水位は、タービン建屋地下の水位とほぼ同じで、これまで予想していた量に近かったという。冷却のため原子炉に注いでいる水が原子炉建屋からタービン建屋に漏れ、高濃度汚染水となってたまっているという。
枝野幸男経済産業相は13日の閣議後記者会見で、東京電力が福島第一原発事故の際の手順を記した資料を「黒塗り」で国会に出した問題で、「なぜ(公表文書として)提出できないのか、私は納得できる説明を受けていない」と批判した。資料には、過酷な原発事故が起きた際の手順が書かれている。だが、東電は、知的財産や核物質防護の内容が含まれる「社内文書」として大半を非公表にした。枝野氏は「(東電は)国民が納得できる説明をする必要がある」と述べ、十分な説明を求めていく考えを示した。
ホー先生 東日本大震災の避難所がだいぶなくなってきたようじゃの。
A 学校の体育館や公民館を使った避難所が、岩手県で8月末になくなったんだ。福島県も残り8カ所に203人。宮城県は仮設住宅の建設が遅れていて、115カ所にまだ2611人が暮らしているよ。
ホ いつになったら、なくなるんじゃ。
A 福島県では9月中には仮設の建設が終わる見通しだ。でも、宮城県女川町では用地不足に対応するため、2階建ての仮設住宅を輸入する計画だったが、調達の遅れで11月にずれこむ可能性もある。入居希望が市の中心部に偏り、仮設が不足している地域もある。
ホ 阪神大震災と比べると、どうなんじゃ。
A 阪神大震災後、神戸市が食事などを公費で提供する避難所を閉鎖したのは7カ月後。今回とほぼ同じペースだ。提供された仮設は今回が約10万戸。阪神の時の2倍だが、このうち半分は民間の賃貸住宅で、公費で家賃が支払われる「みなし仮設」だ。
ホ ホホウ。問題は避難所を出た後の暮らしじゃ。
A 仮設住宅も民間賃貸も、光熱費は自己負担。自炊をしなければならない。住めるのは原則2年で、その間に仕事を見つけたり、自宅を再建したりしなければならない。お年寄りや家族を失った人も多いから、孤立を防ぐ取り組みも大事だね。民間賃貸は住民が分散し、行政サービスをどう行き渡らせるかという問題もある。
ホ 働けないお年寄りや失業した人は、どうすればいいんじゃ。
A 家を失った被災者のために、自治体は国の予算で「災害公営住宅」を建てることができる。でも、仮設住宅の建設に公有地を使い切った自治体も多い。高台で宅地造成するにも多額の費用が必要だが、政府の予算編成は遅れている。大半の自治体は、どこに公営住宅を建てるか決めかねているんだ。
(歌野清一郎)